49歳からのセミリタイア生活

49歳で早期退職しました。東京・高円寺の街あるき、時事ニュース、趣味のことなどをつづります。1日おきに更新。

麻雀と将棋で起きた革命、実社会は変われるか

f:id:hima-life:20200625090454p:plain

先日、麻雀のMリーグの最終日があって、U-NEXTパイレーツが優勝しました。
ほとんどの人は何のことか分からないかと思いますが、2年前に麻雀のプロリーグ「Mリーグ」が発足したのです。
電通テレビ朝日サイバーエージェントコナミといった企業がプロ麻雀のチームを持ち、リーグ戦を戦います。
優勝賞金は5000万円。
初年度は赤坂ドリブンズが初代チャンピオンに輝き、2年目をパイレーツが制しました。

f:id:hima-life:20200625090523p:plain

麻雀界のすごくニッチな話になりますが、この結果に少なからず衝撃を受けている人たちがいるのではと想像します。
麻雀には複数のプロ団体があり、そこから最高峰のMリーグに選手を送り込んでいます。
最大勢力は日本プロ麻雀連盟という団体で、Mリーグに所属する選手の過半数が、このプロ連盟に属しています。
ところが、昨年優勝したドリブンズにも、今年のパイレーツにもプロ連盟の選手は一人もいません。

麻雀は運に左右されることが多い競技です。
だから、「調子がいい」とか「流れが悪い」などを理由に打ち方を決める選手たちがたくさんいます。
プロ連盟という団体には、こうした要素を重視する選手が多い。
配信されているプロ連盟の大会を視聴すると、解説に「流れ」や「ツキ」の話が頻出します。
ところが、今年優勝したパイレーツは、これとは対極的に「デジタル的な思考」をする選手たちの集まりです。
インターネット麻雀で鍛えた選手たちの集団で、中心となる小林剛選手のニックネームは「スーパーデジタル」。
とことんまで合理的な思考を追求していく打ち手です。
昨年優勝したドリブンズの中心選手の村上淳鈴木たろうも合理性を求める姿勢は同じで、小林と一緒に「オカルトバスターズ」を結成して活動していた時期がありました。
「調子」や「流れ」といった要素を重視する考えは麻雀界では長く主流となっていたのですが、彼らはそれを「オカルト」に過ぎないとして強く否定したのです。

f:id:hima-life:20200625090608p:plain

「流れが悪い時はこう打った方がいい」などといった戦術が当たり前だった時代は、インターネットの到来で終わりました。
膨大な量にのぼるネット麻雀の打ち方の分析が進み、麻雀も確率論に基づく合理的な戦術が普及したのです。
そして、Mリーグでは、2年連続で「合理派」が優勝した。
さらにいうと、Mリーグの前身ともいえるRTDリーグが3年間行われましたが、半数以上の選手を送り込んだプロ連盟は3年連続で優勝を逃しています。
非合理的な戦術は、麻雀のトップレベルでは通用しないことが明らかになったのです。

実は、将棋界では30年ほど前にこの動きが始まっていました。
「羽生世代」の台頭がそれです。
羽生善治が出てくる前は、「将棋が強くなるには人生経験を積むことが大事だ」などという考えがありました。
つまり、「苦労をすること」が強くなるための道だと考えられていたんですね。
だから、長い内弟子時代を経験するのが当たり前で、棋士になった後もありとあらゆる盤外戦術が繰り広げられていたのです。

f:id:hima-life:20200625090649p:plain

それが、羽生の登場によって覆りました。
「将棋は盤上のテクニックを競うゲームに過ぎない」という、今では当然のことが、羽生世代によって証明されたのです。
まずは終盤の技術がシステム的に磨き上げられ、やがて序盤の戦術の研究に移りました。
人生経験で勝負しようとしたベテラン棋士たちは羽生世代に次々となぎ倒されていったのです。
いまはさらに進んで、AIで研究する時代になりました。
人間を相手に練習することなく、AIだけを相手にしてトップクラスにのぼった若手棋士もいます。
藤井聡太七段の活躍を見れば、将棋に必要なことは人生経験ではないことがわかるでしょう。

f:id:hima-life:20200625090720j:plain

スポーツ界はどうでしょう。
さすがに「練習中は水を飲むな」「試合に負けたらウサギ跳びでグラウンド1周だ」などと言う人は見かけなくなりました。
だけど、いまだに根性論を振りかざす古い考えの指導者は残っていますね。
大リーグや欧州サッカーでは、トレーニング方法だけでなくメンタル面でも最先端の科学的なアプローチがなされています。
ひたすら練習に明け暮れるよりも、適度に休みを入れた方が好結果が出ることも常識になりました。
しかし、日本の部活の現状を見ると、こうした合理的・科学的な考えをもつ人はまだまだ少ないように思います。
学校教育の現場では、危険な組み体操をずっとやり続けていますからね。
合理的思考能力の欠如は、時代から取り残された学校の先生たちにこそ、より当てはまりそうです。

さて、実社会でも多くの非合理的なことが残っています。
新型コロナで外出自粛が呼びかけられていた時でも「ハンコを押すために出社しないといけない」なんて会社員がいましたからね。
頭の固い年配の上司の中には「苦労しないと成長しない」「営業は何度も足を運ぶことが大事だ」と今でも信じ込んでいる人が多いでしょう。
だけど、時代は確実に変化しています。
合理性や効率性が重視される方向へ。

なぜなら、そうしないと勝ち残れないから。
麻雀や将棋で起きた革命は、やがて実社会にも波及していくでしょう。