セミリタイア生活で簡単に幸福感を得る方法
YouTubeを見ていたら、あるベテランのバイオリニストが音楽教室の先生に必要な資質について語っていました。
なぜそんなYouTubeを見ていたのかは、さておき。
彼女は関西弁でこんな内容のことを、まくし立てていました。
「生徒さんたちにとって、あなたがどんなに難しい曲を弾けようが、ものすごい技術を持っていようが、まったく関係ありません。コンクールの審査員にコネがあっても、役に立ちません。教室にやってくる人は、自分がうまくなることだけに関心があるんですよ。それだけです。生徒さんたちは、自分が少しずつ上手になっていくことがうれしいんです」
いや、彼女は普通にしゃべっていたのかもしれませんが、関西弁はどうしてもまくし立てているように聞こえてしまうんですよね。
音大で難解な曲を必死に練習してきたバイオリニストたちは、技術を磨くことにすべてを費やしてきた人たちです。
だけど音楽教室の先生に必要な資質は、そんな自身の高度な技術ではないということを言いたかったのでしょう。
ともかく、このバイオリンの先生の言葉は核心をついています。
たくさんの生徒たちを見てきた経験から、ほぼすべての人は「自分がうまくなることがうれしくて」教室に通ってくるということです。
ここに、幸福感を得るヒントがあります。
たしか橘玲氏の著書だったと思いますが、幸福感について人々に調査した内容が書かれていました。
それによると、ひとは自分が向上している、成長していると感じているときに幸福感を得るそうです。
だから、生まれてからずっと順風満帆で波風が立たない人生を送った人よりも、一度転落してどん底に落ちてから這い上がった人の方が、「幸福な人生だった」と感じるらしいのです。
ふつうに考えると、苦しむことなく順調に歩む人生の方が幸せそうです。
でも、実際はどん底に落ちてから上がってきた人の方が幸福だと感じている。
なぜなら、後者の方が、人生の過程において「右肩上がりに上昇していく」という経験を味わっているからです。
さあ、これで分かりました。
幸せだと感じるには、一番どん底から何かを始めて上昇していく、という体験をすればいいのです。
その意味で、まったくやったことのない楽器を始めるというのはいいですね。
なんせバイオリンでもサックスでも、最初は音さえ満足に出ないから。
ちゃんと音が出ただけで喜びを得ることができます。
実は、ぼくも最近ピアノを習い始めました。
49歳。
楽譜さえ読めないところからのスタートです。
簡単な曲が1曲弾けるようになっただけでうれしいものです。
出発点がゼロなので、あとは右肩上がりに成長していくのみ。
幸せが続きます。
たとえ下手くそでも「オレには伸びしろがたっぷりあるぜ」と余裕を見せておけば大丈夫。
時間がたくさんあるセミリタイア生活なら、練習すればするほどうまくなるという経験ができるでしょう。
将棋や囲碁を始めるというのも手です。
最初はルールさえ分からない。
そこから一歩一歩強くなっていく過程を味わうことができます。
楽器と違って、レベルを示す級や段があるのもいいですね。
10級くらいから始まり、どんどん強くなって初段にでもなれば、達成感でいっぱいでしょう。
楽器でも将棋でも、重要なのは他人と比べないことです。
どうせプロになるわけじゃないから。
もちろんライバルがいれば励みにはなりますが、気にしすぎるとやっかみや嫉妬の感情が入ってしまって楽しくありません。
自分が向上するだけで満足することが大事です。
それに、若い人ほど吸収が早いので、オジサンはどうせ次々に抜かされます。
将棋なんかはあとから習い始めた小学生にボロボロに負かされます。
そんな状況も楽しむのが大事。
自分を負かして強くなった子どもがもしプロにでもなったら、飲み屋で自慢すればいいのです。
酒を一口飲み、遠い目をしてつぶやくんです。
「あいつは俺を踏み台にして、一人前になったよ」って。