高円寺食堂で、日本一ノミネートの唐揚げをほおばる
生まれてきた赤ちゃんに限らず、名前って大事ですよね。
会社を立ち上げるにせよ、新しくお店を始めるにせよ、いろんな思いを込めて名前を決めるのだと思います。
マンションの名前にも凝ったものがありますよね。
ネットで調べたところ、日本一名前が長い分譲マンションは「THE IMPERIAL GARDEN LIMITED RESIDENCE」ではないかという情報がありました。
「インペリアル」に「ガーデン」に「リミテッド」と、全部てんこ盛りにしたかったんでしょうね。
もしかしたら会議でもめたかもしれません。
開発担当「緑が多いのが特長だから、ガーデンは入れた方がいいかと」
販売担当「リミテッドを入れて特別感を打ち出さないと顧客にアピールできません」
部長「高級感を出したいからインペリアルは外せないな」
社長「めんどくさいから、全部入れてしまおう」
全員「・・・」
みたいな。
フレンチやイタリアンのレストランの名前も、やたら読みにくかったりします。
西麻布にあるフレンチレストラン「OHARA ET CIE」は「オオハラ エ シーアイ イー」と読むらしいです。
読めんがな。
最初に店名を見た人は、「オハラエトシエ」とかなんとか読んじゃいますよね。
店名だけでなく、料理名もやたら長ったらしいですよね。
「ブリュターヌ産フォアグラのテリーヌ 季節の温野菜とクリーミーなソースアメリケーヌ リ・ド・ヴォとレンズ豆のガトー仕立て」とか。
「特選和牛フィレのポワレとサフランリゾット キャビアとカリフラワーのムースリーヌ」とか。
そんな店に通う人は海原雄山みたいに講釈を垂れたりするんでしょうね。
「このオマール海老はさすがブリュターニュ産だね」なんて。
ああ、やだやだ。
まあ、ぼくには縁のない世界です。
店名に凝った名前をつけたい気持ちは分かります。
長い修行時代を終えて念願の一国一城の主になったからには、「いずれは世界に名が轟く店にしてやる」みたいな野望にあふれているでしょうからね。
ミシュランの星を獲得したら取材が殺到するな、と想像したりして。
そのときに備えて、修行時代に訪れたフランスの地名だとか、旅行で気に入った島の名前とかを店名に付けてしまう。
そして、お客さんは誰も読めず、店も繁盛しないまま消えてしまったりするんですね。
なが~い前置きはここまでにして。
行ってきました、「高円寺食堂」。
なんてシンプルな名前だ。
あまりにわかりやすい。
エライ。
堂々としている。
この名前を掲げるからには、どれだけの老舗なんだろうと思いますが、今年オープンしたばかりです。
あらゆる飲食店がひしめく高円寺で、よくこの店名が空いてましたね。
場所は新高円寺駅から歩いて2分、以前、メロンパンの店があったところです。
思えば、メロンパンブームもあっけなかった。
ここは弁当もありますが、カウンター席で食べることもできます。
注文したのは、唐揚げ定食(800円)。
ああ、なんてわかりやすい料理名だ。
「自家製サーモンのカルパッチョ 海の恵みの宝石仕立て 黒トリュフとトピナンブールを添えて」と比べたら、わかりやすさが際立ちますね。
「オレには、このシンプルな定食が似合ってるんだ」と孤独のグルメの井之頭五郎さんならつぶやくでしょう。
ここの唐揚げ、実は唐揚げ協会の唐揚げグランプリにノミネートされた一品らしいです。
唐揚げ協会も唐揚げグランプリもまったく知りませんが、きっと唐揚げ界では権威があるのでしょう。
唐揚げ界のアカデミー賞といったところか。
たしかに味付けがしっかりしていて、脂っぽさもなく、ジューシーで美味しい。
唐揚げ定食といえばガッツリした男の食事のイメージがありますが、肉じゃがやサラダも添えてあってヘルシーです。
サラダは2種類ありました。
それがいちいちタイカレー風味だったりして、繊細さが伝わってきます。
みそ汁にも青物がたっぷり入っていて、やさしい味です。
ほかにも、ガパオライスや、おばんざいプレートもあって、ヘルシーさを求める女性客を意識しているのがわかります。
店内はこぎれいで入りやすい雰囲気。
壁には小さな絵が飾ってあって、おしゃれです。
実際、女性が1人で食事しているのをよく見かけます。
高円寺食堂、名前から浮かぶイメージとはちょっと違うんですね。
あなどれません。
名前だけで判断してはいけません。