高尾山から陣馬山まで縦走してみたら・・・
縦走。
なんて甘美な響きのある言葉でしょう。
ちゃんと山を登っている感じがします。
山のベテランは「俺、週末はあのあたりを縦走してきたわ」とか言いそうですよね。
ぼくみたいに高尾山をうろうろ歩いているだけのヘッポコおじさんも、一度は言ってみたい。
「こないだ、ちょいと縦走してきたよ」なんてね。
というわけで、初心者でもできそうなジュウソウにトライしてみました。
高尾山から景信山を経て陣馬山まで歩くコースです。
まずは高尾山をケーブルカーで登ります。
えっ、なんで自分の足で登らないかって?
今回の目的はあくまで縦走なんです。
無駄に体力を消耗してはいけません。
最初から張り切ってしまうと、きっと陣馬山までたどり着かないでしょう。
梅雨の合間に雨が上がった週末の一日。
高尾山には、このチャンスを逃してはならぬとばかりに登山客があつまりました。
午前8時半発のケーブルカーも満席です。
到着したら、30分ほどで高尾山の山頂へ。
早くも下山する多くの登山客とすれ違いました。
通は早朝登山なんでしょうか。
山頂の景色はごらんのとおり。
晴れていれば富士山も見えるのに、真っ白です。
まあ、今回の目的は景色じゃないので、さっさと進みます。
高尾山頂の標識をみると、小仏城山まで60分、景信山まで120分とあります。
ふむふむ。
わざわざ「☆陣馬山までは、ゆとりをもって1日の行程です」と赤文字で注意書きされています。
気が引き締まります。
まずは小仏城山へ向かいます。
テクテクと歩いてると、横をさっそうとランニングする人たちが追い抜いていきます。
山道を走るトレイルランニングをやっている友人に言わせると「奥高尾は、なだらかなので走りやすいよ」とのこと。
いやいや、ぼくは上りの階段を歩くだけで早くも息が切れてるんですが。
走るなんて滅相もない。
こちらは何とか陣馬山までたどり着ければ御の字でございます。
高尾山から45分で小仏城山に到着。
すでに疲れています。
茶屋の周りでは「おでん」「かき氷」「なめこ汁」といった魅力的なのぼりがはためいていました。
美味しそうになめこ汁をかきこんでいる山マダムを横目に、こちらはソイジョイのブルーベリー味を口に入れました。
まだ5分の1しか到達していないと思うと、気が遠くなります。
10分だけ休憩して景信山を目指します。
雨を避けてやってきたのですが、影響は残っているようで、足元がぬかるんでいます。
トボトボ進んでいると、おなかがポッコリ出ている中年男性がハアハア言いながら歩いているのを見つけて、勇気が出ました。
お互い、頑張りましょうね。
最後の急な坂をなんとか上りきって、到着。
一息つきます。
この景信山、どうやら鬼滅の刃の「聖地の山」らしいです。
まだ序盤しか読んでいないからわからないんだよなあ。
鬼殺隊のひとりが、景信山出身とのこと。
う~ん、知っている人にしか刺さらない情報です。
ともかく、ブームにあやかろうと鬼滅の刃のグッズも売っていました。
なんでもアリですな。
貴重なおにぎりを1個食べてエネルギーを補給し、いよいよ陣馬山へ向かいます。
標識をみると、陣馬山まで180分。
見なかったことにして、歩きはじめます。
ポイントは、ひたすら巻き道を選ぶこと。
山歩きを始めて知ったのですが、山のピークを迂回する道のことを巻き道っていうんですね。
山は連なっているので、そのてっぺんを全部踏破しながら縦走するのは大変です。
まっすぐ頂上へとのぼっていく道を避け、回り道をして体力を温存する。
それが、われわれ弱者の兵法です。
途中、巻き道へ進もうとしたときに「そっちは結構ぬかるんでますよ」と教えてくれた女性がいました。
「ありがとうございます。大丈夫です」と、お礼を言いながらも巻き道へ。
たとえぬかるんでいても、のぼり坂よりはマシというのが、体力のない初心者の選択肢なんです。
1時間あまり進んで、明王峠に到着。
トイレと、ちょっとした休憩所があるので、腰を下ろしました。
近くに座っていた男性2人組の声が聞こえてきます。
おにぎりを食べながら、楽しそうに登山談義をしているようです。
「あの山はクマが出るんだよな」
「やっぱ、冬山行かなきゃ男じゃねえよ」
勇ましいですな。
こっちは冬山なんて恐れ多い。
もう、男じゃなくてもいい。
陣馬山までどうにかたどり着ければ十分でございます。
そして。
高尾山頂から4時間、這うようにして陣馬山にたどり着きました!
気高い白い馬のモニュメントがそびえ立っています。
バックが青空じゃないのが残念ですが、どうでもいいです。
達成感より、ただただ疲労感が全身を覆います。
でも、ここは自分をほめよう。
せっかくだから、茶屋で山菜そば(700円)を注文しました。
登山客が多く、行列ができていましたね。
なんてこともないソバなのに、無茶苦茶おいしい。
きっと、体が塩分を欲していたのでしょう。
シイタケの甘味もしみます。
30分ほど休憩して下山。
これが、急こう配で厳しかった。
山菜そばで心身のエネルギーを補充してなかったら、きっと途方に暮れていましたね。
足をガクガクさせながらなんとか降りていきます。
最後にごほうびが待っていました。
川のせせらぎが聞こえてきたのです。
沢に近づきます。
水はきれいで、手を浸すと、すごく冷たい。
顔をバシャバシャ洗うと、すっかり生き返った気分になりました。
終わり良ければすべて良し。
縦走できて、よかった。