人生はギャンブルだということを、多くの人はわかっていない
ぼくが大学生のころはバブルが弾ける直前でした。
だから、就職活動は銀行や証券会社が人気。
採用数も多く、同級生の多くが金融業界に就職していきました。
安定したお堅い職業と言えばだれもが「銀行」と答えた時代です。
中でも、政府系の銀行なんかは安定した就職先の最たるものと見られていました。
興銀の愛称で呼ばれた日本興業銀行や、長銀と呼ばれた日本長期信用銀行は、その代表的な銀行です。
だけど、現在は両行ともこの世に存在していません。
安定と言えば、公務員もそうでしょう。
バブルの時代に北海道の夕張市役所に就職が決まったひとは、「これでオレの一生は安泰だ」と思ったかもしれません。
しかし、市は2006年に353憶円の財政赤字を抱えて財政破綻。
市職員は破綻前の263人から100人足らずにまで減りました。
実に6割以上の職員が削減されたのです。
いま、銀行ではフィンテックの導入などで大幅な人員削減が続いています。
財政難や市町村合併を理由に、職員が減らされている自治体も増えています。
かつて「安定」の代名詞だった職業は、もう「一生安泰」とは言えなくなってしまいました。
「幸せ」の代名詞だった結婚も、いまは様相が変わってきていますよね。
結婚したからと言って、必ずしも幸せになるとは限りません。
先日は、イチローのこんな記事が出ていました。
「努力一筋のひと」というイメージのイチローが、あっさりとこう言ってのけています。
結婚してから初めて分かることの方が多いわけで、ギャンブルですよ。それを認めなかったら結婚なんかできないですよね
つまり、就職にも結婚にも「絶対」ということはないのです。
幸せになるかもしれないし、失敗するかもしれない。
人生の選択のすべてはギャンブルです。
ギャンブルという言葉が刺激的すぎるのなら、「選択のすべてはリスクとリターンの関係で成り立っている」と置き換えてもいいでしょう。
たとえば、銀行に就職するか、ミュージシャンの道を進むか迷っていたとしましょう。
銀行員になれば安定した生活を送れる「可能性が高い」けれど、100%ではないし、仕事は堅苦しくてつまらないかもしれない。
ミュージシャンとして成功する確率は限りなく低いけれど、スターになれるかもしれない。
どちらにもリスクとリターンがあります。
どの道を選んだとしても、それはギャンブルです。
もっと身近な選択で言うと、飲酒や喫煙もありますね。
お酒を飲むと楽しくなったり、コミュニケーションが円滑になったりします。
一方で、飲みすぎる危険性もあって、仕事に支障が出たり体を壊したりするかもしれません。
タバコを吸うと気分が落ち着く人もいるでしょうが、健康への影響は大きいし、周囲を不快にさせる場面も多いでしょう。
みんな、それらのリスクとリターンを考えて、行動を決めているのです。
難しいのは、いずれも「可能性」だから「絶対」ではない点です。
タバコをいくら吸っても健康で長生きする人もいます。
どれだけ健康に気をつけ、有機野菜ばかりを食べて、毎日運動していても、若くして亡くなってしまう人もいるのです。
リスクとリターン、つまりギャンブルには、確率がつきまとうのですね。
みんな無意識のうちに確率を計算しながら選択をしています。
たとえば、覚せい剤を使うと快感を得るというリターンがありますが、人生を棒に振るリスクがあまりに大きい。
だから、これは「確率上、無謀なギャンブル」として、ほとんどの人は手を出さないのです。
引っ越しも、家を買うのもギャンブルです。
隣人がどんな人なのかは分からないし、地価が下落するリスクもある。
車を運転するのだってギャンブルです。
快適に移動できるリターンがあるかわりに、交通事故のリスクを常に負っています。
片思いの女の子に告白するのも賭けです。
失敗したら失恋して心に痛手を負うリスクはあるけれど、うまくいけばハッピーになれるリターンが待っている。
早期退職してセミリタイア生活を選んだこともギャンブルですよ。
資金面の不安や社会的な地位の喪失といったリスクを抱えながら、仕事をしない生活を送っているわけです。
世の中には「ギャンブルはいけない」と考えている人は多いのですが、チャンチャラおかしい。
人生はギャンブルです。
大事なのは、冷静にリスクを認識したうえで、後悔しない選択をすることです。